心臓病の初期は症状が現れにくいため、一緒に生活していてもなかなか気がつかないものです。ワンちゃんの心臓の異常信号をできるだけ早く感知し、早期にケアをしてあげることが大切です。心臓病は特別な病気ではありません。どんなワンちゃんでも心臓病になってしまう危険性があります。
心臓病の症状
心臓は生命の維持に必要な血液を全身に送り出す重要な組織です。心臓病になるとポンプ機能が衰えてしまい全身に様々な障害が出てきます。組織へ運ばれる血液量が減るので酸素や栄養が不足し、血液がうまく運ばれないことで体に水分が貯留したり老廃物が蓄積してくるのです。
初期は症状が見られませんが、病気が進行してくると運動をしたがらなくなったり、呼吸困難、セキ、失神、体液貯留(浮腫・腹水・胸水・肺水腫)などが生じるようになり、やがて生命が脅かされる危険も出てきます。
犬のセキについて
犬のセキは人間のセキとは聞こえ方が異なるので、セキだと気づかずに過ごしてしまいがちです。
- のどに何かひっかかったような仕草をしませんか?
- 吐きそうだけれど吐かない、そんな仕草をしていませんか?(実際に食べ物や体液を吐くこともあります)
犬のセキはこのように勘違いされてしまうことがあります。気管支炎・肺炎・気管虚脱など呼吸器自体の病気からもセキは見られますが、心臓病でも血行が悪くなることにより、肺や気管に負担がかかりセキが出るのです。心臓病によるセキは夜間から明け方にかけて多く見られます。
僧帽弁閉鎖不全症とは
生まれた時すでに心臓に解剖学的な異常をもっている心奇形のワンちゃんもいます。しかし多くは加齢とともに現れてくる後天性の病気です。
後天性心臓病には弁膜症・心筋症・フィラリア症などがあります。フィラリア症は寄生虫が原因なので薬を飲むことで予防できますが、他はほとんど発生原因がわかっていません。どんなワンちゃんでもなってしまう可能性があるのです。犬では僧帽弁閉鎖不全症が最も多くみられる心臓病です。
僧帽弁は心臓の左心房と左心室の間に位置する薄い弁で、心室が収縮した時に閉鎖し血液の逆流を防いでいます。僧帽弁閉鎖不全症は、この弁が変形して肥厚し完全には閉鎖できず、心室が収縮する時に全身に送られるはずの血液の一部が逆流する病気です。
あらゆる犬種でみられますが特にマルチーズ、シーズー、ポメラニアン、プードル、ヨークシャーテリア、キャバリアなどの小型犬に加齢と共に多発します。
心臓病の治療法
心臓病の種類によって治療法や予後は異なります。先天性心臓病では心奇形の種類や程度により経過観察や内科療法を行うこともありますが、外科手術が必要となる場合もあります。また僧帽弁閉鎖不全症をはじめとする後天性心臓病では、一度障害がおこった心臓を元の健康な心臓に戻すことはできません。内科療法を中心として、心臓の負担を軽くし心臓病の進行をできるだけ遅くすることが目的になります。
○心臓病の内科療法
- 食事療法・・・低ナトリウム食など心臓病のための処方食があります。
- 運動制限・・・激しい運動や興奮は心臓に急激な負担をかけます。
- 薬物療法・・・血管拡張剤、利尿剤など症状にあわせて投薬します。
- 体重管理・・・肥満は心臓病を悪化させる要因になります。
心臓病の初期には症状がみられませんが、聴診することによって心臓の異常を発見することができます。また症状が落ち着いていても知らないうちに病気が進行していることもあります。定期的に健康診断としてレントゲン検査や超音波検査などを行い、現在の心臓の状態をチェックしておくことが大切です。